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▷作品紹介
『風の電話』
http://www.kazenodenwa.com/
 
▶イントロダクション
その電話に、電話線はつながっていない。しかし、東日本大震災以降、3万人を超える人々が、この場所を訪れている。どうしても話したい大切な人がいる。そこにいるのが当たり前だった家族に、さよならを伝えたい──。そんな悲しみを抱え生きる人々に、静かに寄り添う映画が生まれようとしている。
大槌町で東日本大震災に遭った高校生のハル。広島県にいる叔母の家に身を寄せているが、気持ちは大槌町に向いていた。故郷を目指し、ヒッチハイクを始めたハル。様々な人と出会い、別れ、共に旅をしていく。ハルの目には、どんな景色が映っていくのだろうか。
2011年に、大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんが自宅の庭に設置した〈風の電話〉。死別した従兄弟ともう一度話したいという思いから誕生したその電話は、「天国に繋がる電話」として人々に広まり、今も多くの人の来訪を受け入れている。
映画『風の電話』は、この電話をモチーフにした初めての映像作品である。難題と思われたこのテーマに挑戦したのは、『M/OTHER』、『不完全な二人』の諏訪敦彦監督。重要な主人公ハルを、注目の女優モトーラ世理奈が演じ、西島秀俊、西田敏行、三浦友和ら日本を代表する名優たちが、彼女の熱演を温かく包む。
現場の空気感まで切り取り、ドキュメンタリーのように俳優たちの動きを映していく、諏訪監督ならではの手法で制作された本作。共に旅をしたような、唯一無二の映画体験が見る人の人生にそっと刻まれる。

▷あらすじ
17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は、東日本大震災で家族を失い、広島に住む伯母、広子(渡辺真起子)の家に身を寄せている。心に深い傷を抱えながらも、常に寄り添ってくれる広子のおかげで、日常を過ごすことができたハルだったが、ある日、学校から帰ると広子が部屋で倒れていた。自分の周りの人が全ていなくなる不安に駆られたハルは、あの日以来、一度も帰っていない故郷の大槌町へ向かう。広島から岩手までの長い旅の途中、彼女の目にはどんな景色が映っていくのだろうか―。憔悴して道端に倒れていたところを助けてくれた公平(三浦友和)、今も福島に暮らし被災した時の話を聞かせてくれた今田(西田敏行)。様々な人と出会い、食事をふるまわれ、抱きしめられ、「生きろ」と励まされるハル。道中で出会った福島の元原発作業員の森尾(西島秀俊)と共に旅は続いていき…。そして、ハルは導かれるように、故郷にある<風の電話>へと歩みを進める。家族と「もう一度、話したい」その想いを胸に―。

▶スタッフ
監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈、西島秀俊、西田敏行、三浦友和、渡辺真起子

▷監督紹介
1960年生まれ、広島県出身。東京造形大学テサイン学科在籍中から映画制作を行い、1985年、監督・制作・脚本・撮影を担当した短編映画「はなされるGANG」が、第8回ぴあフィルムフェスティバルに入選。テレビトキュメンタリーの演出も手がけ、1995年の作品「ハリウッドを駆けた怪優/異端の人・上山草人」は高く評価された。1997年、映画『2/デュオ』で長編映画監督デビューを果たす。シナリオなしの即興演出という独自の演出手法は、この頃から確立。1999年、『M/OTHER』で第52回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞、第14回高崎映画祭最優秀作品賞、第54回毎日映画コンクール脚本賞を受賞。アラン・レネ監督の『二十四時間の情事』をリメイクした『HStory』、パリを舞台に日仏スタッフで制作した『不完全なふたり』、演技経験のない9歳の女の子を主人公にした『ユキとニナ』など、どれも「シナリオなし」で作られた実験的な制作方法が取り入れられている。2019年、フランスの伝説的俳優ジャン=ピエール・レオーを主演に迎えた『ライオンは今夜死ぬ』を発表した。東京藝術大学大学院映像研究科教授。

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