下野戸亜弓現代箏曲の世界
Ayumi Shimonoto: The World of Contemporary Koto music

2020年10月15日(木)
トーキョーコンサーツ・ラボにて開催したリサイタルの配信映像のノーカット版をアップしました。作曲者トーク、アンコールも収録。
HP  https://shimonoto.jp

[プログラム]
いつしかと君にと思いし
植物文様琴歌集より月読三歌・藻塩二歌
黄連雀
みづとり
(アンコール)万葉の恋歌

出演
下野戸亜弓(箏・三絃・歌)
石川 高(笙・歌)
藤枝守(作曲家)
武智由香(作曲家)
福士則夫(作曲家)

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1,いつしかと君にと思いし
Itsushika to kimi ni to omoishi (One of these days I meant to …)  
作曲:下野戸亜弓 Ayumi Shimonoto

いつしかと
君にと思いし若菜をば
法のためにぞ
今日は摘みつる

I kept thinking that one of these days
I’d pick a bouquet of fresh greens to delight you.
But here I am having picked them instead
For the altar as prayers for your soul.

Improvisation:
 One of these days
I meant to gather
 for you
fresh greens for you
a bouquet for you
  to please you
oh, I wanted to
I kept meaning to
 But here, too late
I gather them green leaves for the altar
as prayers for your soul
oh, as prayers for your soul
I meant to gather for you
spring greens for you
a bouquet for you
to bring you delight
I kept meaning to for you
But now, too late
Oh, one of these days, I thought I meant to for you ・・
  for you・・・・
(梁塵秘抄566 /英訳:Barbara Ruch)
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2, 海原、神島 「植物文様琴歌集〜月読三歌」(2014-16)から
Unahara (ocean), Kamishima (god’s island) from Shokubutsu Monyō Kinkashū – Three Songs of Tsukuyomi (moon)(2014-16)
め刈り、山にたなびく 「植物文様琴歌集〜藻塩二歌」(2018)から
Mekari (algae hunting), Yama ni tanabiku (smoke trailing over the mountain) from Shokubutsu Monyō Kinkashū – Two Songs of Moshio (algae salt) (2018)
作曲:藤枝守 Mamoru Fujieda

「海原」
海原の 道遠みかも 月読の 光少なき 夜は更けにつつ (巻七 1075)
「神島」
月読の 光を清み 神島の 磯海の浦ゆ 船出すわれは (巻十五 3599)
「め刈り」
志賀の海人は め刈り塩焼き暇なみ くしらの小櫛 取りも見なくに (巻三 278)
「山にたなびく」
志賀の海人の 塩焼く煙風を疾み 立ちは上らず 山にたなびく (巻七 1246)

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3, 三絃、語りと笙のための「黄連雀」Waxwing for Sangen, Narration, and Sho  
 作曲:武智由香 Yuka Takechi

Vladimir Nabokov 「Pale Fire」より 

私は窓枠の中の偽りの青空に殺された
一羽の黄連雀の影だった
私はちょっぴり(ガラスに)くっついた
その灰色の柔毛(にこげ)の跡だった
それから私は反映の空の中を生き続け、飛び続けていった。

そうして雪が降り出して芝生を覆ってゆき、だんだん積もって
椅子やベッドが向こう側のそのクリスタルの国の
雪の上に、ぴたりと決まって収まったときの何という楽しさ

「降り積もる雪」から再開しよう。
ひらひらと舞う雪のひとひらは
不定形 スロー うつろいゆくくもり色
昼間の澄んだ白に対する 鈍い暗い白。
中和された光の中に浮かぶ抽象のカラマツ林。
そしてそれから 
夜が「観るもの」と「観られるもの」とを合体させてゆくにつれて
次第に広がる 二重のブルー

私は窓枠の中の見せかけの遥かの空に殺された
一羽の黄連雀の影だった
(訳:中井義幸  *詞章は抜粋)

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4, みづとり Mizutori
作曲:福士則夫 Norio Fukushi

やまのうへにふるきぬまあり、
ぬまはいのれるひとのすがた、
そのみづのしづかなる
そのみづにうつれるそらの
くもは、かなしや、
みづとりのそよふくかぜにおどろき、
ほと、しづみぬるみづのそこ、
そらのくもこそゆらめける。
あわれ、いりひのかがやかに
みづとりは
かく、うきつしづみつ
こころのごときぬまなれば
さみしきはなもにほふなれ。

やまのうへにふるきぬまあり
そのみづのまぼろし、
ただ、ひとつなるみづとり。
(山村暮鳥「三人の處女」より)
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*アンコール
万葉の恋歌   Man’yō no Koi Uta/Love Songs from the Man’yōshū   
作曲:下野戸亜弓 Ayumi Shimonoto
 
(本歌)大津皇子の、石川郎女に贈りたまへる御歌一首
  あしひきの 山のしづくに 妹待つと 我立ち濡れぬ 山のしづくに
(返歌)石川郎女が和して奉れる歌一首
  吾(あ)を待つと 君が濡れけむ あしひきの 山のしづくに ならましものを
                            <万葉集巻二>

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